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1996/12/06
Weekend Theater ID:21

皆様の一服の清涼剤、おなじみウイークエンドシアターの時間です。
お楽しみください。

ハードボイルドOL
伊集院 涼子シリーズ

第6回
「女難」

鈴木源次という男がいる。
社長と同期の親友で、
今、アイルランドの現地法人準備室責任者
として、ダブリンに赴任中だ。
責任者といえば聞こえはいいが、その実
女性問題が元で飛ばされたと言う方が正しい
ことは、涼子達OLの間でも有名だ。
「よう!久しぶり。」
ロンドンのホテルで久しぶりに落ち合った
社長と鈴木源次は、少年の様にはしゃいでみせ、
同行した涼子を照れさせた。
「聞いているぞ。今回はずいぶん無理難題を
背負って来たようだな。できるのか?戦争保険なんか。
しかし、いずれにしても出世したもんだ。
世界のサー・オッペンハイマーと渡り合おうなんて。」
「俺じゃなきゃお前が来てるさ。お前の手が早くて助かったという所だ。
しかしよりによって会長の女に手を出すとは。
勇気があるのか軽率なのか。」
「言ってくれるじゃないか。しかし、あの時は驚いた。
君は涼子君といったっけ。なぜ俺がばれたかしっているかい。」
「聞かせていただいてよろしいのですか?」
「・・・その女は銀座のフォウンテンブローという、
高級クラブのナンバーワンだった。会長と
いい仲だということは、口説き落とした
後から知った。やばいとは思ったが、
イザベル・アジャーニに良く似たいい女だったから、
ちょっと無理をした。
ある日同伴で待ち合わせている所に、会長と
出くわした。そこへ彼女がやってきた。
普段なら頭の良い女だから、そんな時は俺のことを無視する
のだが、会長はその時、たまたま別の知り合いとも出くわして、
後ろを向いていた。彼に気が付かない彼女は俺に甘えた声で
『スーさん!お待たせ。』
会長が振り向いて、万事窮すさ。」
「それで、こんどは懲りて少しは大人しくなったんだろうな。」
ロビーの真中で話す三人に向かって、アイルランド系の、
それこそイザベル・アジャーニかと思うような美人が手を振ってこう言った。
「スーさん!」
社長は鈴木をなじった。
「おいおい。またかい。」
鈴木は小刻みに首を横に振った。
小さな女の子が 、 驚く三人の横をその女性に向かって
走り抜けた。その子の着ているトレーナーの背中には
こう書いてあった。
『SUZAN』






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