2023/09/29
Weekend Theater ID:1425
おはよ~。
本日は中秋の名月だそうです。
東京、夜には晴れるか。
さて、今週もいよいよ週末。
一週間お疲れ様でした。
忙しい中、一服の清涼剤。
ご存知、金曜ホラー劇場。
お楽しみください。
霊感刑事
有栖川 公司
第20回
「老舗の包装紙」
昭和の激動を乗り越え、
一身で建設機械業を大手に育てた
大牟田権蔵は、書斎の椅子に座り
机にうつ伏せて亡くなっていた。
大牟田の屋敷に到着した有栖川は、
池泉回遊式の庭園の見事さに少し見とれた。
大牟田の屋敷は広大な敷地の中、
書斎のある平屋の大きな母屋を中心に
左に息子が建てたロココ調の洋館、
右に弟が建てた『新館』と呼ばれる
現代建築風の美麗な建物が建っていた。
「有栖川刑事、死因は毒物の注射による
中毒死とみて間違いないでしょう。」
鑑識が有栖川に言った。
「争った形跡がまったく無いようだが。注射跡は
どこに?」
「首の後ろですね。注射器は見つかっていません。」
権蔵の机の後ろには高い本棚を設えた壁があった。
顎を撫でながら有栖川は言った。
「後ろから抵抗無しに注射するのは無理があるな。
犯行現場はここでは無いようだ。」
部下の新米刑事、出井塔子が言った。
「昨夜大牟田氏は午後8時に帰宅していると
執事が証言しています。死亡推定時刻が
午後9時から10時ですから、外から運び込まれたのでは
無く、この敷地内、あるいは屋敷内での犯行ではないかと。
母屋の3人の執事にはアリバイがあります。犯行現場は
息子の洋館・弟の新館の何れかと。敷地内と母屋は
探索の結果注射器は見つかっていません。どちらかの
建物にあるのではないかと。」
有栖川は期待の新人、出井塔子のはきはきとした読みを
聞きながら、うつ伏せの大牟田が懐に入れている手を引き出して見た。
「有栖川さん!これは?ここへ運ばれ、虫の息でのダイイング
メッセージでしょうか!?」
有栖川は手に握られている紙を広げた。和菓子で有名な
虎屋の包装紙だった。
有栖川はパチンと指を鳴らし叫んだ。
「私の霊感が働いた!
犯行現場は『ようかん』だ!」
※実在の人物、団体、事件、商品とは関係ありません。