年代へJump
2019/10/25
Weekend Theater ID:1220

おはよ~。

霜降。寒い季節が始まります。

さて、今週もいよいよ週末。
一週間お疲れ様でした。
忙しい中、一服の清涼剤。
ご存知、金曜ホラー劇場。
お楽しみください。

「世界はあなたを待っている」
第十回

「最先端設備」

愛はバディのモニカと千葉県の富津へ向かっていた。
セキュリティ部長の戸田から直接密命があったのは
先週の週末だった。
「どうやら米軍の鼻先に、テロ組織の最先端設備が
あるらしいという情報があった。」
愛とモニカ、戸田の3人は人払いをした部長室で、
それでも戸田は身を乗り出して小声で話した。
「設備って?米軍の鼻先にあると困る設備って、
ミサイルランチャとかですか?」
モニカもつられて小声になった。
「どうやら量子コンピュータらしいんだ。」
戸田は眉をひそめながら話した。
「量子超越性の実証をGoogleが発表し、
ビットコイン相場が急落したのは知っているな?
つまり量子コンピュータは最後の砦と
言われたブロックチェーンの暗号技術を
打ち破る事が証明されたという事だ。
何しろスパコンで1万年かかる演算が3分で終わるんだ。
もう、この世に解読できない暗号は存在しない事になる。」
「つまり米軍の暗号を量子コンピュータで
丸裸にする為、ハッキングとか形跡が残る方法ではなく、
直接通信傍受をして解析しようという事ですか。
それならセキュリティの甘い日本に駐留する米軍は
うってつけですね。」
愛が普通の調子で話したので、小声で話していた戸田と
モニカは驚いたように愛を見つめた。
「私なら横須賀駐留の米海軍。千葉の富津岬側からなら
数キロにの距離ですから、警戒されずに狙いやすい。」
愛が続けると戸田が指を鳴らした。
「ビンゴだ。西園寺君。まさにその富津に量子コンピュータがある
のではとの情報だ。二人で行って確かめて来てくれ。
あくまでコンフィデンシャルで頼む。」
富津の海岸は全くのんびりしていた。天気も良く、
海は穏やかでリゾートのようだった。
愛とモニカはドローンを飛ばして建物や人工物の映像
解析をし、設備らしきものを特定しようとした。
「愛、これはどう?なんか小さな漁船が船底を上に向けて
置いてあるの不自然じゃない?」
「・・そうね、行ってみましょう。」
そこは磯の香りが強くする小さな漁港だった。
問題の船は船底を上に向けて置いてあった。
船底の突端には白いプラスチックの突起物があり、
レーダードームのようにも見えた。
「ちょっとお尋ねしますが、この船はなぜ船底を
上にして置いてあるんですか?」
船のそばで工具を広げ、なにやら電子部品をルーペで
確かめていた老人にモニカが声をかけた。日焼けと皺で
『指輪物語』のエントのような老人は、しゃがれた声で
「修理中なんだ。」と顔も上げずに答えた。
「先生~、コンピュータの先生~、俺の魚群探知機は直りそうだかね~。」
遠くから長靴に手ぬぐいハチマキをし、真っ黒に日焼けした
大男が手をふり、声をかけながら近づいて来た。
「おや、お客さんかね。あか抜けたお客だね。
コンピュータの先生の知り合いかね?」
大男は愛とモニカに満面の笑顔で話しかけた。
「いえ、知り合いではないんですが、
何をしているのか尋ねていたところです。
彼はコンピュータの先生と呼ばれているんですか?」
「ああ、そんだな。何でもああいった電子ものに詳しいから。
今もおらの船の魚群探知機直してしてもらってるだから。
すんごいお人だかんな。昔から漁も一流で学問も一流で、
みんなから『漁師コンピュータ』って言われてっど。」



※実在の人物、団体、事件、商品とは関係ありません。
All rights reserved by NY