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2019/06/28
Weekend Theater ID:1203

おはよ~。

令和最初の台風。

さて、今週もいよいよ週末。
一週間お疲れ様でした。
忙しい中、一服の清涼剤。
ご存知、金曜ホラー劇場。
お楽しみください。




「世界はあなたを待っている」
第八回

「遠くに」


「一体どのくらいいるのよ!」
モニカは背もたれにどっかりともたれた。
ユニバーサルのセキュリティ部門は、米国大手セキュリティ会社、
サイバーリーズン社から、セキュリティ業界を賑わしているハッカー
集団、「ATP10」の特定を依頼されていた。
中国政府に敵対しているとみられる各国要人や政府関係者20人の
ビッグデータを、世界中の通信社からこの集団が抜き取ったと言われ
ている。
歩き回りながら考えていた課長の白土は、モニカのモニターの前に立
ち止り、腕組みをしてモニカを見下ろした。
「そりゃ世界には星の数ほどハッカー集団はいる。
闇雲に探すのは砂漠で特定の砂粒を探すに等しいさ。
だが今回のキーワードは『中国政府』だ。
だからフォーカスは2点。敵対しているのか、敵対を偽装しているの
か、だ。」
「まさか、ワーロックはいないですよね・・・。」
そう言って身震いをするモニカの隣の席から、愛がモニカの腕に手
を置いた。
「大丈夫。今回は違う気がするの。ワーロック率いるクラウドホッ
パーは、もっと洗練されていて品があるのよ。それに個人情報なん
て狙わないと思うわ。下品だもの。」
愛は決意したように課長に向き直った。
「じつは、まだ確証はないんですが、尻尾らしきもの見つけました。」
「なに!なぜ早く報告しない。」
「今回の手口は、狙った通信社のサイトから、ウェッブサーバに
ウェッブシェルをアップロードして、遠隔する方法がとられている
んですが、遠隔に使われたNICが示すMACアドレスのベンダーコード
がすべて"HUAWEI"なんです。すみません。相手が相手なので確証を
得てからと思いました。」
白土は目をむいた。
「なんと!ファーウエイ!大物だな。この先、どう掘るんだ?」
「はい。狙いをつけている、今アクティブな機器をトレースしてい
ます。尻尾を掴めればいいんですが。」
「ミス・チャオ!すぐ西園寺君のバックアップへ。西園寺君、私の
席へモニタクローンを。」
緊張の作業が始まり、愛が追うトレース先のIPが次々並ぶモニター
を、白土は自席で見つめた。
鋭い警告音が一回響くと、モニカが悔しそうに言った!
「逃げた!!」
白土は消えゆくIPの並びを見ながら情けない声で叫んだ。
「ああ!ファーウエイがファーラウエイ!」


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