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1996/11/29
Weekend Theater ID:20



さて、いよいよ週末がやってきました。
一服の清涼剤。11月最後の金曜ホラー劇場。
お楽しみください。



ハードボイルドOL
伊集院 涼子シリーズ
第5回
「林檎」

涼子は社長と共に、機上にあった。
社長は韓国問題のリスクヘッジとして、
世界の保険の元祖、「ロイズ」
の実力者、サー・オッペンハイマーに
『戦争保険』を引受させようというのだ。
もともと保険は、戦争の様に「破壊」が
前提の事象にはなじまない。
社長は何か勝算があるのだろうか。
涼子は離陸の時の、不安とも期待ともつかない
感じとオバーラップした、不思議な感覚に浸かっていた。

ロンドンでのサー・オッペンハイマーは、
自ら涼子達を出迎える程の歓迎振りだった。
何台ものリムジンが連ねて空港のアライバルに
並んでいる姿は、政府の要人並みだった。
彼の邸宅に着くと、彼は大変ひとなつっこく、
しかも饒舌になった。特に日本には昔から興味
があったらしく、色々な事を知っていた。
映画で見る様なディナーをすませると、
定石通り別室のリビングで、リキュールタイムとなった。
そこでも日本の話題は尽きなかった。
「前から不思議に思っていることがあるのだが。」
サー・オッペンハイマーが、しかつめらしい表情で
涼子に尋ねた。
「何でしょうか。サー。」
流暢な英語で涼子も答えたが、次の彼の言葉に
涼子は耳を疑った。
「私も家内も日本のプロ・レスリングが好きでね。
ビデオを送ってもらっては見て楽しんでいるのだが、
一人だけいつも”林檎、林檎”といっているレスラー
がいるんだ。いま、そのビデオを見せるから、
なぜ彼はそう云うのか教えてくれんかね。」

彼がつけたビデオには、「アポー、アポー」
と叫ぶジャイアント・馬場が写っていた。







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