その男は自分が狼男である事に、ようやく慣れて来た所だった。(満月の光さえ浴びなければ、別にどうと言う事はない・・・。)男はごく普通に生活をし、ごく普通に仕事をしていたのだが、あるミスがきっかけで上司から陰湿ないじめにあう事になってしまった。社内恋愛に発展しそうだった女性も、それと感ずいた上司が退職に追い込んでしまった。男は復讐を誓った。その上司が必ず金曜に、夕方から接待でいつも決まった店に行く事を、男は掴んだ。その週の金曜は、好都合に満月だった。(目の前で変身してやろう・・・。そして・・・クックックッ・・・。)男はまだ日があるうちにその店の前の店に入り、機会を伺っていた。月が高くなり、上司が上機嫌で店を出て来た。(今だ!)男は上司の前に飛び出すと、月の光を浴びようと空を仰いだ。だがその日、千七百年に一度の長時間皆既月食が起きていた。空には光の無い、赤黒い月が浮かんでいた。男は叫んだ。「げっ!ショック~!」
(実際7月16日から17日に掛けて、1700年に一度の1時間47分にも及ぶ皆既月食があります。晴れていれば地球の影にすっぽりと入った月が、オレンジから赤黒い色で、ポッカリと暗い空に浮かぶ、幻想的な天体ショーが見られる事でしょう。) ※実在の人物、団体、事件、商品とは関係ありません。